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「キューブリック映画の音楽的世界」明石政紀・著/アルファベータ出版

Category : スタンリー・キューブリックの本/書籍・アプリ
“音楽的世界”と記された書籍名そのものにより
かなり損をしているんじゃないかと思われる。

実はこの本、かなりおもしろい。
スクリーンショット 2012-10-17 3.36.51 スクリーンショット 2012-10-17 3.35.30
●<キューブリック映画の音楽的世界:Amazon
珍しく感想から入るのは、(勝手生意気ながら)題された“音楽”というフレーズが消費者の接触機会を下げているような気がするため。実際は音楽のみならずスタンリー・キューブリック全作品へ及ぶ徹底した映画論であり、少し見方を変えると、単純に「映画の見方を知りたい」「発想法を鍛えたい」「切り口の幅を広げたい」などなどのニーズへも応えてくれるお手本の様な読み物です。

キューブリックの映像・演出スタイルにはじまり、時にはシークエンス単位、カット単位にまで絞って考察を展開。抽出されるテーマ、各作品を繋ぐ共通項または変容、さらに語録や製作背景に渡るまで幅広い要素で構成され、この文筆スタイルのまま造詣深き音楽項目へと突入。キューブリックの選曲にまつわるエピソードや奏者情報、曲目、曲名、歌詞に至るまで、映像・音楽の両面からテーマ性を発見するというこれまでのキューブリック本に見られなかった手法で映画論が発展します。まことに勝手ながら、映像〜音楽というニュアンス伝達のため「非情の罠」に関する題目だけを例として抜粋させて頂きます。
 ・最初で最後のニューヨーク劇映画
 ・キューブリックの「性愛衝動もの」の先駆
 ・概略
  負け犬ボクサー、中年ギャング、そして女
  予告する出だし、出会いの前の並行関係
  覗き見による人間関係の発生
  三角関係の発生と対決、そして
 ・映像
  俳優に対する演出
 ・音楽
  奮起のテーマ
  グローリアとヴィンセントのテーマ
  アクションの山場に音楽は不要
  踊りとバレエ
音楽の項目は後半戦で、前半も面白そうでしょう?? 反復展開される映像〜音楽解釈は、客観性のある(著者からのいち)提示としてあくまで謙虚に記され、“これがキューブリック作品のテーマ=答えだ!”なんていう一方的なものは皆無。映画と小説は別モノ、と言う至極当たり前であることも丁寧にやさしく応じるあたり、軟らかい著者の姿勢にも好感が持てます。それでいて核心へ迫るんですからまったく秀逸。

また、この本では一般的に出回っている情報も拾いながら進められるため、“はじめてのキューブリック専門”書or映画解釈専門書としても最適かもしれない。これはキューブリックという監督を知りたいと言う意味でも、基本的ウンチクを装備したいと言う意味でも対応可能。とは言え、著者の明石氏は(著書内で明言されている通り)ステレオタイプな切り口を可能な限り用いず、これが従来の和製キューブリック本になかった独自性を持たせた所以と言える。
この発想のもと、例えば「実現しなかった企画」という題目では「ナポレオン」でも「A.I」でもなく「アーリアン・ペーパーズ」へ固執!この志しから滲み出るニッチ上等の素晴らさ。そんな熱い想いを読み取ると、潔く謙虚に大胆にタイトルへ記した「音楽的世界」の文字も納得なんですけどね…。それにしても音楽的世界に留まらずに展開される「キューブリック映画の世界」が素晴らしいのです(実際、半分は演出表現全般に関するものですから)。

さて、本の構成・仕様も若干紹介
(こじか並に書籍の構成ネタバレを避けたい方は以下注意)。
作家で翻訳家、音楽家の明石政則氏による2007年の著書で、定価3200円+税。表紙カバー付きのハードカバー、無線綴じの442頁。青色の帯もありました。表紙カバーを除くと全てが1色刷りで、DVDジャケ写12作品分以外は挿絵なし。文章は映像・音楽共に専門用語乱発などはなく平たい表現でとても読みやすいもの。
キューブリックの遺志で封印された「恐怖と欲望」は例外的にコメントが付された後、「非情の罠」から遺作「アイズ ワイド シャット」、さらに先述の「アーリアン~」までを一作ずつに分けて追求しています。作品ごとに分けられているとは言え、作品公開の時系列を問わず共通項が示されることもあるため、出来る事ならキューブリック全作品の鑑賞を前提にすることが望ましい。さらに、巻末にはキューブリック作品に関するディスコグラフィが掲載されており、地味すぎ〜る書き方の割に音楽全網羅のほか撮影期間やロケ先情報などまとまってて面白いですね。

さてさて、日本語で読めるスタンリー・キューブリックに関する書籍では、研究本としてミシェル・シマン「KUBRICK」、充実したムック形態としてイメージフォーラム別冊「キューブリック」、比較的近年の発行物では監督評伝の「映画監督スタンリー・キューブリック」、奇天烈マニアが書いたマニア向けな「キューブリック全書」あたりが代表格となるんでしょうか。主立ったキューブリック本と言えば海外著者の翻訳作品が多数を占めますが、映画論を主軸としてチョイスするなら「キューブリック映画の音楽的世界」といったところかな。日本オリジナルの著書でここまで一貫したテーマ(音楽)を通じて論じたものが他になく、当書籍の様な純・日本産の登場は大歓迎ですね。気になる方は書店〜Amazonなどにて。
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Author:こじか
こんにちは。邦画洋画を問わず映画ファンである以上に、スタンリー・キューブリックファンであるこじかです。わたくし自身が極めて神経質なネタバレ嫌いのため、作品への記述・画像にも同様の配慮を図り、映画論評も書かないスタンスで進めます。のんびりポジティブに。その他、好きなものも極たまに登場。よろしくお願いします。

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